ジャーナリングに最適な方法は? 一日のうちで理想的な時間帯は? どのくらいの時間をかけるべき? 一日何ページ書かなければならないか?
そんなことはすべて忘れてください。あなたにとって、どう書くかよりも、なぜ書くかの方がずっと重要です。胸のつかえを吐き出すため。静かに考えを巡らせるため。考えを明確にするため。有害なものと有益なものを区別するため。次の日の準備と、過ぎた日を振り返るため。ジャーナリングに正しい方法も間違った方法もありません。重要なのは、ただ書くことです。
ジャーナリングのルールはすべて忘れる
あなたの心、あなたの意識の深い場所へアプローチするのに、あなた以外の人が考えた方法でなければ上手くいかないと誰かが決めたのでしょうか? 自分の心と向き合うのに、誰かの許可が必要なのでしょうか。多くのアドバイスは、確かにあなたにノートを開かせ、ペンを手にすることを促してくれます。では、枠がきれいに装飾され、記入項目の線があらかじめ引かれた機能的なノートに、あなたは何を書くのでしょうか?
アドバイス通りに感謝をしますか?ブレットの数に合わせてTo Do リストを作りますか? それとも、なんとなく見たような気がする記憶が曖昧な夢を無理やり文字にするのでしょうか?
はっきり言います。
ジャーナリングをスタートさせることは、あなたが思っているよりも骨が折れます。
なぜなら、これを読んでいるあなたは、自分の求めているジャーナリングがTo Do リストの延長線上にあるものとは違うことを知っているからです。
あなたが、ストア派の哲人たちが人生の意味と知恵を求めた哲学の実践として日々続けることが「必要」だった、そのジャーナルを始めようとしているからです。
だから、書いたものにどんなに不満足でも、わずか1行しか書けなくても、内容が薄く感じられて自己嫌悪に陥ろうとも、続けるしかないのです。
あなたに今お伝えできる最高の知らせは、 毎日続けていくことによって書き方はどんどん変化して、あなたがどのようなジャーナリング進めていけばいいのかを、あなた自身のノートがノートの上であなたに教えてくれるということです。
ジャーナリングの方法に答えはない
記録にある偉人の例からも、 ジャーナリングの方法に答えはないことがわかります。
どんな方法でも、そのやり方を思いついた自分を認めて始めてください。途中でやり方を変えても全く構いません。とにかく続けてください。
レオナルド・ダ・ヴィンチ 1452-1519
レオナルド・ダ・ヴィンチは、自分自身への小さな寓話を書く癖がありました。
ルネサンス期のイタリアの万能の天才であり、画家、彫刻家、科学者として『モナ・リザ』や『最後の晩餐』などの名作を残した人物
ベンジャミン・フランクリン 1706-1790
ベンジャミン・フランクリンは、13の美徳を実践するという個人的に構築した改善プログラムの進捗状況をジャーナリングで記録しました。
アメリカ合衆国の政治家、外交官、著述家、発明家であり、独立運動に貢献し、雷の電気性を証明する実験でも知られる偉人
トーマス・ジェファーソン 1743-1826
トーマス・ジェファーソンは朝のジャーナリングで気温、風速、降水量などの気象測定を始めました。
アメリカ合衆国の政治家であり、第3代大統領として「アメリカ独立宣言」の起草者の一人
ベートーヴェン 1770-1827
ベートーヴェンは、以前の会話で言いたかったことをジャーナリングで書き留めることが好きでした。
ドイツの作曲家であり、古典派音楽の集大成とロマン派音楽の先駆者として知られる「楽聖」と呼ばれる重要な人物
チャールズ・ダーウィン 1809-1882
チャールズ・ダーウィンは29歳で「小さなジャーナル」を始めたとき、人生で覚えていることすべてを書き留め、最終的には最新の情報を把握し、ジャーナリングを日々の注目すべき出来事に移しました。
イギリスの自然科学者であり、進化論を提唱し、全ての生物が共通の祖先から自然選択を通じて進化したことを明らかにした
マーク・トウェイン 1835-1910
マーク・トウェインはジャーナリングで下品なジョークを書く欄を設けていました。
アメリカの著作家であり、特に『トム・ソーヤーの冒険』や『ハックルベリー・フィンの冒険』で知られ、ユーモアと社会風刺に富んだ作品を通じてアメリカ文学に大きな影響を与えた
トーマス・エジソン 1847-1931
トーマス・エジソンは、その日の最もありふれた出来事や詳細を記録することを目標にしました。「ドラッグストアに行き、キャンディーと称するものを買い、いつもの空虚な表情で金持ちの若者に過酸化窒素を持っているか尋ねると、彼は理解できないという狂ったような視線を向けました」とエジソンは1885年7月19日に書いています。
アメリカの発明家であり、電球や蓄音機などの革新的な発明を通じて現代の電気産業を発展させた人物
ヘミングウェイ 1899-1961
ヘミングウェイはどこへ行くにもノートを持っていき、出費を記録し、さらに奇妙なことに、妻の生理周期を記録していました。
アメリカの小説家であり、簡潔な文体と人間の苦悩を描いた作品で知られ、特に『老人と海』や『武器よさらば』などが代表作
今日から始める〜あなた
ジャーナリングにルールはありません。ページはあなただけが見るものです。頭に浮かぶものはすべて書き出してください。ジャーナリングに決まったやり方はありません。正しい書き方もありません。あなたのやり方があるだけです。とにかくやってください。
1日に1回、2回、3回、何回でもいいです。自分に合った方法を見つけてください。
ジャーナリングが1日のうちで最も大切な時間になるかもしれないことを覚えておいてください。
日記をつける効果の科学的な根拠
ここまでは少し精神論めいたように聞こえたかもしれません。 この後は、すでに深い洞察力を持つあなたが安心して取り組めるように、科学的に証明されているジャーナリングの効果をご紹介していきます。
科学的に裏付けられたジャーナリングの利点
ジャーナリングを裏付ける科学的研究は広範囲にわたっています。
「科学的研究により、ジャーナリングは本質的に現代生活の万能薬であることがわかっているのだ。マインドフルネス、記憶力、コミュニケーション能力の向上など、明らかな利点がある。しかし、研究により、日記をつけることで睡眠の質が向上し、免疫システムが強化され、自信が増し、IQも高まることがわかっている。
ニュージーランドの研究によると、この習慣は傷の治癒を早める効果があるかもしれないという。どうしてこんなことが可能なのか?テキサス大学オースティン校の社会心理学者で、ライティングセラピーの先駆者とされるジェームズ・W・ペネベーカー氏は、答えはひとつではないと語る。「一連の出来事が連鎖的に起こるのです」と同氏は言う。
感情にラベルを付け、トラウマ的な出来事を認めることは、どちらもジャーナリングによる自然な結果であり、人々に良い影響を与えることが知られており、伝統的なトークセラピーによく取り入れられているとペネベーカー博士は述べた。
同時に、書くことは基本的に組織化システムです。ペンネベーカー博士によると、ジャーナリングは、心の中で出来事を整理し、トラウマを理解するのに役立ちます。そうすると、脳がその経験を処理するという非常に負担の大きい作業から解放されるため、作業記憶が向上し、睡眠も良くなります。
その結果、免疫システムと気分が改善され、リフレッシュした気分で仕事に行けるようになり、パフォーマンスも向上し、社交も活発になります。「魔法のような瞬間などありません」とペネベーカー博士は言います。「しかし、効果があることはわかっています。」ーニューヨーク・タイムス
パフォーマンスの向上
ハーバードビジネススクールが実施した調査によると、一日の終わりにジャーナリングをした参加者は、しなかった対照群と比較して、パフォーマンスが25%向上しました。研究者は、「私たちの研究結果は、振り返りが学習の背後にある強力なメカニズムであることを示しており、アメリカの哲学者、心理学者、教育改革者であるジョン・デューイの「私たちは経験から学ぶのではなく、経験を振り返ることで学ぶ」という言葉を裏付けています」と結論付けています。
幸福度の向上
ケンブリッジ大学による別の研究では、ジャーナリングが、トラウマやストレスの多い出来事の後の幸福度の向上に役立つことが分かりました。参加者は、そのような出来事について15~20分間書くように求められ、身体的および精神的健康の両方が改善しました。
明確なコミュニケーション
コミュニケーションスキルの向上— スタンフォード大学の研究により、書くことと話すことの間には重要な関係があることがわかりました。書くことは明確な思考を反映し、ひいては明確なコミュニケーションにつながります。
精神的苦痛が軽減
『The Journal of Social and Personal Relationships』による研究では、「ネガティブな状況におけるポジティブな結果に焦点を当てた」文章を書くと、精神的苦痛が軽減されることがわかりました。
睡眠の改善
実験心理学ジャーナルによると、寝る前にジャーナリングをすると、認知刺激、反芻、心配が減り、より早く眠りにつくことができるそうです。
認知力の向上
実験心理学ジャーナルに掲載された研究によると、内省的な文章を書くことで、ネガティブな出来事に対する侵入的かつ回避的な思考が減り、作業記憶が改善されることがわかりました。これらの改善により、ストレスに効果的に対処する能力など、他の精神活動に認知リソースを割くことができるようになります。
実践のための究極のヒントを3つ
どのようなスタイルで書くかは自分で考えていくわけですが、書き出しの方法をいくつか覚えておくと、ペンが思うように動き出さない時でも比較的楽にスタートできます。 あなたの自由な思考の流れに影響与えない、シンプルな方法を3つだけお伝えします。
心は意外な場所なので、心の中で探りを入れてみるまで、そこに何が隠れているのかは分かりません。言い換えれば、ペンを持ってノートに何か文字を書き込まない限り、自分が何について書くべきかを知ることはできません。
ペンを手にして何かを書くことで、1つ目の扉が開くのです。
小さく始める
まずは1行から始めましょう。今の自分の気持ち、きのう印象的だったこと、ずっと気になっていること、など何でもいいので1行だけ書きます。まずは1週間続けてみましょう。 文章の長さは問題ではありません。ノートに書いた自分の言葉が、何かを自分に打ち返してくる感覚を捉えてください。
必ず何かを「記録」する
「書くことがない」 とジャーナリングを止めてしまう人がほとんどですが、ジャーナリングの習慣を保ち続けるために毎日ノートを開き、必ず何かを記録します。
その日選んだネクタイ、朝食に選んだジャム、朝のスタンドで選んだコーヒー。 その選択には必ずあなたの思考が何かしら影響しています。 一見、無関係に見えるその記録が、あなたの深い意識との対話の入り口になっていきます。
今日もちゃんと書けなかった…などとは思わないでください。記録が1つだけだったとしても、充実した気持ちでペンを置き、ノートを閉じてください。
あなたがノートに書いた言葉は、深海に響くエコーのように、かならず海底で反射してあなたのもとへ返ってきます。
自分に質問をする
どんなことでも構わないので、自分に質問をして自分で答えることをしてみてください。例えば、「なぜ今日はランチに冷やし中華を選んだのか」でも構いません。 初めのうちは、自分の意識へ迫る質問をストレートに自分自身へ向けられないかもしれませんが、質問を繰り返していくうちに徐々に道がならされて、やりやすくなっていきます。
哲人皇帝マルクス・アウレリウスも苦労した
朝起きるのが辛い…
マルクス・アウレリウスは、彼のジャーナリングである『自省録』の中で、朝に暖かく快適なベッドから起き上がるのに苦労したことを認めています。それでも、彼は何かを書き留め、考えを巡らせ、自ら起こすべき行動を自分に問うことをやめませんでした。
自分の生き方や考え方が、他の誰かの人生の幸せに直結していると感じることもあるかもしれません。 そのようなときでも、感情的にならずに、ストア派の基本である「コントロールの二分法」を実践していく事は欠かせません。
自分の考えを紙に書き出すことは、自分の思考を遠くから、一歩離れて見ることを可能にします。
不安や恐怖、フラストレーションが心に溢れているときには、往々にして客観性が失われてしまいます。戦場のテントの中で、マルクスはインクとペン、パピルス紙を手に考えを巡らす時間を持ったことで、落ち着いて集中した一日を過ごし、重要な仕事に取り組めたのです。
「自分の性格を鍛え、規律する必要があるという認識。修辞学への興味に惑わされないこと。抽象的な問題について論文を書いたり、道徳的な説教をしたり、『シンプルな生活』や『他人のためだけに生きる男』の空想的な描写を書いたりしないこと。雄弁、詩、美文芸から遠ざかること。家の中を散歩するためだけに着飾ったりしないこと。率直に書くこと。」— マルクス・アウレリウス
『自省録』という奇跡
マルクス・アウレリウスはどこでジャーナリングを学んだのでしょうか。おそらく、ストア派の哲学の実践として、先人たちに習い、当然のごとく習慣となっていったのでしょう。
彼のジャーナリングのおかげで、五賢帝の最後の皇帝として頂点に立った人物が、いかに自らと語り合っていたのかーいかに賢明に生きるか、いかに逆境を乗り越えるか、いかにイライラさせる人々に対処するか、いかにネガティブな考えと戦うか、いかに責任と義務を果たすかー、もともと誰かに見せる予定で書いたものではなく、 自分のためだけに書き残した深い思考の軌跡が、2000年の時を越えて『自省録』として私たちに残されていることは奇跡としか言いようがありません。
マルクスは『自省録』を通じて、自己の内面と向き合うことの絶対的とも言える重要性を示してくれました。その言葉は、今の私たちにも深い洞察を与えてくれます。私たちも彼のように、紙に思考を走らせることで、自分自身を理解し、成長していくことができるのです。
ストア派としてのジャーナリングへ
ストア哲学を実践するために、あなたの日々のジャーナリングのプロンプトとして、マルクス・アウレリウス、エピクテトス、セネカなどの残した言葉をメールで配信しています。
ジャーナリングにおけるプロンプトとは、思考や感情を引き出し、自己内省を促すための具体的な質問やテーマのことを指します。これにより、書き始める際のきっかけが生まれ、自己理解を深めるプロセスがスムーズになります。
ここでのプロンプトは、よくある一般的な質問をいくつも投げかけるものではなく、ストア派の言葉に触れ、自らの思考によって考えを深める道筋を作り出していくものです。安易な質問に反射的に答えるときに使う意識と、意味ある言葉の中から自分への問いが生まれてくる過程で使われる意識では、あなたの理性や本質に働きかける力が違ってきます。メールでは、表面的な質問を羅列するのではなく、時間を割く価値のあるストア派の言葉をプロンプトととして利用していきます。
まずは、始めてみませんか?
もし何も書くことがないと思う日でも、プロンプトとして送られてきたストア派の言葉をノートに書き写すだけで、あなたのストア派としての実践は一歩前へ進みます。
また、ノートに書き写したストア派の言葉が、あなたの思考の扉を開けて、その先へ導いてくれることもあるでしょう。
あなたの人生を導く知恵や習慣は、気まぐれなひらめきによって得られるものではありません。日々の実践によって少しずつ獲得されるものです。だからこそ、ジャーナリングは少しでも早く始めるべきなのです。
ストア哲学について読み、考えることは素晴らしいことですが、ジャーナリングは、私たちがストア哲学を学び、実践していく上で、極めて重要なツールの一つです。
たとえ一行でも、あなたの思考を紙に書き出すことから始めてください。小さな一歩が、あなたの人生を変える大きな一歩につながります。あなたの心の声に耳を傾け、自己理解を深め、あなた自身が自分の心強いパートナーとなりましょう。
このプロンプトメールを、ぜひあなたの人生の羅針盤としてご活用ください。