魂にとって悲劇的なこと、それは未来を恐れ、不幸を先取りして苦しみ、自分に喜びを与えてくれる何かを最後まで失うことはないかと不安と欲望に心を奪われることだ。そうした魂が安らぐことは決してない。未来を待ち望めば、今喜びを与えてくれる恵みを失うことになるからだ。- セネカ『倫理書簡集』
It is tragic for the soul to be apprehensive of the future and wretched in anticipation of wretchedness, consumed with an anxious desire that the objects which give pleasure may remain in its possession to the very end. For such a soul will never be at rest; in waiting for the future it will lose the present blessings which it might enjoy. – Moral Letters to Lucilius: Seneca
現代を生きる私たちは、常に先のことを考え、計画を立て、未来に備えようとします。それ自体は決して悪いことではありません。
しかし、その過程で、今この瞬間の喜びや幸せを見逃してはいないでしょうか？そしてあなたは今日、どれだけ未来のことを心配していましたか？未来の不安は当然まだ的中したわけではなく、したがって前もって不安がるかどうかはあなた自身が決められることです。
セネカは、未来への不安や、大切なものを失うかもしれないという恐れに囚われた魂は、決して安らぐことができないと警告しています。
もし、未来が想像していたよりも少しでも良いものだったら、不安に苦しんでいた時間は無駄にはならないでしょうか？想像していた最悪のことが起こったら、２度大きな苦痛を味わうことにならないでしょうか？
そのような心の状態では、今この瞬間に存在する喜びや幸せを見逃してしまいます。私たちにはコントロールできないことがたくさんあります。しかし、今この瞬間は確かに存在し、私たちの手の中にあるのです。
今日、あなたの1日から必要のない不安を追い出すことができたら、あなたはどんな1日を手にすることができるでしょうか。今この瞬間に、集中してみてください。
セネカは紀元前4年頃、現在のスペインにあたるコルドバで生まれ、ローマ帝国の哲学者、政治家、劇作家として名を馳せました。ストア派哲学の代表的思想家でありながら、大資産家として富を築き、若い皇帝ネロの家庭教師を務め、権力の中枢にまで上り詰めました。この生き方は、しばしばストア哲学との矛盾を批判されました。しかし、実はそこに現代を生きる我々への大いなるヒントが秘められています。『人生の短さについて』や『怒りについて』など、彼の著作は今なお広く読まれ、富を手にしながら自分を見失うことなく、幸せと自由を追求する術を与えてくれます。
