子供たちが、ナッツやイチジクの入った口の狭い瓶に手を入れ、いっぱいに掴むと手が抜けなくなり、泣き始める。数個落とせば残りは取り出せるというのに。同じように、あなたも欲望を抑えなさい。多くを求めないように。そうすれば手に入れられるのだから。- エピクテトス『語録』
When children thrust their hand into a narrow jar of nuts and figs, if they fill it, they cannot get it out again; then they begin crying. Drop a few of them, and you will get out the rest. And do you too drop your desire; do not demand much, and you will attain. – Discourses of Epictetus
エピクテトスのこの言葉は、欲望と満足の関係について深い洞察を与えてくれます。
私たちの日常生活を振り返ってみると、この子供たちの姿に自分を重ねることはありませんか？仕事、お金、物、人間関係など、あれもこれもと欲しがり、手に入れようとして苦しんでいることはないでしょうか。
この言葉は、欲望や執着を手放すことの重要性を説いています。欲張りすぎると、かえって何も得られなくなってしまうという教訓を、子供の行動を例に挙げて分かりやすく説明しています。
解決策は意外にもシンプルです。エピクテトスは、欲望を適度に抑え、必要最小限のものに満足することで、本当に大切なものを手に入れられると教えているのです。
「数個落とせば残りは取り出せる」、私たちの欲望についても同じことが言えます。すべてを手に入れようとするのではなく、本当に必要なものに絞ることで、かえって多くを得られるのです。
この教えは、現代社会においてより重要性を増しています。世間で大事だといわれているものを疑い、本当に大切なものとは何かを見直すのです。
周囲の評価や、広告の甘い誘い、自己評価からくる焦りから開放されて、目の前にあるものが本当に必要なのか考えてみましょう。
すべてを手に入れようとして苦しむよりも、本当に大切なものに集中することで、より充実した人生が送れるとエピクテトスが言っていることを常に思い出してください。
エピクテトスは紀元後50年頃、現在のトルコにあたるヒエラポリスで奴隷として生まれました。生まれながらの身分や、足に障害があるなど過酷な境遇にもかかわらず、彼はストア派哲学の偉大な思想家へと成長しました。彼の教えは、後に皇帝マルクス・アウレリウスに深い影響を与え、『自省録』の中で何度も言及されています。奴隷に生まれ、時の最高権力者の精神的指導者となったエピクテトスの人生は、運命の劇的な逆転を体現しています。彼の教えの記録『人生談義』は、困難な状況にあっても内なる自由を保ち、幸福を追求する方法として、今なお多くの人々に読まれ続けています。
エピクテトスは、健康を外的なものとして捉え、完全にコントロールできるものではないと考えました。しかし、健康的な生活習慣を維持することは個人の責任であると教えています。2000年前と違い、私たちに少しだけ有利なことは、今は自分の体質の傾向を詳細に知った上で健康管理ができることです。ストア派の実践は健康管理と両輪です。私もこの検査によって健康意識が一段上がりました。共に、幸せと本当の自由を手に入れるために進んでいきましょう。
