Email-エピクテトス

覚えておきなさい。あなたは劇中の役者であり、劇作家によって選ばれたのだ…

覚えておきなさい。あなたは劇中の役者であり、劇作家によって選ばれたのだ。劇作家が短いものを望めば短い劇の役者となり、長いものを望めば長い劇の役者となる。もしあなたに物乞いを演じることを望めば、生来そうであったかのように自然に演じるのだ。足の不自由な人間でも、役人でも、庶民でも同じことだ。あなたの役目は、与えられた役を演じ切ることだが、配役は他の誰か(神)の役目である。- エピクテトス『要録』

Remember that thou art an actor in a play of such a kind as the teacher (author) may choose; if short, of a short one; if long, of a long one: if he wishes you to act the part of a poor man, see that you act the part naturally; if the part of a lame man, of a magistrate, of a private person, (do the same). For this is your duty, to act well the part that is given to you; but to select the part, belongs to another. – The Enchiridion of Epictetus

私たちの人生はそれぞれ異なります。生まれつき恵まれた人もいれば、逆境を背負った人もいます。チャンスに恵まれている人も、そうでない人もいるのです。

どんな状態に置かれようとも、私たちは与えられた役割を受け入れ、善き判断を行い、ストア派の哲学を実践しながら生きていこうとしています。しかし、ときには自分の人生に納得できなくなることもありますよね。

昔、こんなことがありました。中学生になったばかりの息子が、なんだかふさぎ込んでいました。話を聞いてみると、小学校の頃に雑誌で見た中学生活はキラキラしていて楽しそうだった。しかし、実際の中学校は全く違った。あれは嘘だったんだ、と彼は感じていました。広告や虚飾に彩られたイメージを無邪気に信じ込まされていた彼は、現実の自分の状況を初めて知ったのです。

私はどんな言葉をかけたら良いか迷いました。「あれは雑誌の世界だ、落ち着いて現実を見よう。君には家族もいるし、今ひどく困っていることはないはずだ。君自身が良いと思うことを、ただ始めればいいんだ」と言うことで精一杯でした。

大人になっても、彼のような気持ちになることはいくらでもあります。職場で同僚にスポットライトが当たっていたり、SNSでキラキラした生活を紹介している人を見たりすると、自分の人生がなぜこんなに苦難に満ちているのかを意識せざるを得ません。

自分の置かれた状況を理解することは、多くの人にとって決して楽しい作業ではありません。しかし、ここでもう一度「役者」に目を向けてみましょう。

役者にまず求められることは、自分に与えられた役を理解することです。そうしなければ、いつまでたっても劇の幕は上がりません。

では、名優と呼ばれる人たちは、どんな人たちでしょうか。彼らは、自分に与えられた役を深く理解することから始めます。そして、その先の未来がどんなものであろうと、あたかもそれが当然であるかのように振る舞い、役としての人生を繋いでいくのです。

このエピクテトスの言葉は、もしかすると「人生はほどほどに生きられれば良しとしろ。お前の運は悪かったんだ」と受け取られるかもしれません。しかし、これを「名優として生きろ」と理解することもできるのではないでしょうか。 

名優として自分の役を本当に理解した人だけが、自分の人生の主役となり、唯一無二の人生を手に入れることができるのです。簡単なことではないかもしれませんが、私は自分の人生の「名優」となりたいと思っています。 

参考文献

エピクテトスとは?

エピクテトスは紀元後50年頃、現在のトルコにあたるヒエラポリスで奴隷として生まれました。生まれながらの身分や、足に障害があるなど過酷な境遇にもかかわらず、彼はストア派哲学の偉大な思想家へと成長しました。彼の教えは、後に皇帝マルクス・アウレリウスに深い影響を与え、『自省録』の中で何度も言及されています。奴隷に生まれ、時の最高権力者の精神的指導者となったエピクテトスの人生は、運命の劇的な逆転を体現しています。彼の教えの記録『人生談義』は、困難な状況にあっても内なる自由を保ち、幸福を追求する方法として、今なお多くの人々に読まれ続けています。

 

エピクテトスは、健康を外的なものとして捉え、完全にコントロールできるものではないと考えました。しかし、健康的な生活習慣を維持することは個人の責任であると教えています。2000年前と違い、私たちに少しだけ有利なことは、今は自分の体質の傾向を詳細に知った上で健康管理ができることです。ストア派の実践は健康管理と両輪です。私もこの検査によって健康意識が一段上がりました。共に、幸せと本当の自由を手に入れるために進んでいきましょう。