どんなものでも快楽にふけりたくなったときは、流されないように用心すること。すぐに実行せず、少し待ってみること。
二つの時間を思い浮かべるのだ。快楽にふける時間と、その後に快楽にふけったことを後悔して自分を責める時間を。
そして、もしこのような快楽を遠ざけたなら、どれほどの喜びを感じ、自分自身を讃えることになるかを考えよ。
たとえ少しくらいなら衝動に従ってもいいと思われるような場合でも、その魅力や快楽、誘惑があなたを打ち負かすことのないように気をつけるのだ。むしろ、これに勝利したという自覚をもつことのほうがどれほど優れているかを考えてみるのだ。- エピクテトス『要録』
If you have received the impression of any pleasure, guard yourself against being carried away by it; but let the thing wait for you, and allow yourself a certain delay on your own part.
Then think of both times, of the time when you will enjoy the pleasure, and of the time after the enjoyment of the pleasure when you will repent and will reproach yourself.
And set against these things how you will rejoice if you have abstained from the pleasure, and how you will commend yourself.
But if it seem to you seasonable to undertake (do) the thing, take care that the charm of it, and the pleasure, and the attraction of it shall not conquer you: but set on the other side the consideration how much better it is to be conscious that you have gained this victory. – The Enchiridion of Epictetus
ここでの大事なポイントは、快楽が実際にどのような状況を引き起こすのかを先まで考える習慣をつけることです。
人は目の前に誘惑が現れると、「今回だけは…」と都合の良い理由を作り出して流されてしまいがちです。誘惑で妖しく輝いていた快楽の時間は一瞬で過ぎ去り、その後には長く罪悪感にさいなまれる苦痛の時間が始まります。
しかし、快楽にふけるよりも、それに打ち勝つほうがずっと気分が良く、自分を誇れることが理解できれば、魅力は色褪せ、衝動には引かれなくなっていくでしょう。
エピクテトスは、快楽に流されずに自分を見失わないことの大切さを説いています。
その具体的な方法が、すぐに行動に移すのではなく、わずかでも時間を置いて考えてみることなのです。そして、その快楽を遠ざけたなら、どれほどの喜びを感じ、自分を誇りに思うかを考えてみてください。
正直、耳の痛い話ではありますし、失敗の数々が脳裏をよぎります。それだけに、喜びを感じ、誇れる自分を手に入れる意義を痛感するのです。
エピクテトスは紀元後50年頃、現在のトルコにあたるヒエラポリスで奴隷として生まれました。生まれながらの身分や、足に障害があるなど過酷な境遇にもかかわらず、彼はストア派哲学の偉大な思想家へと成長しました。彼の教えは、後に皇帝マルクス・アウレリウスに深い影響を与え、『自省録』の中で何度も言及されています。奴隷に生まれ、時の最高権力者の精神的指導者となったエピクテトスの人生は、運命の劇的な逆転を体現しています。彼の教えの記録『人生談義』は、困難な状況にあっても内なる自由を保ち、幸福を追求する方法として、今なお多くの人々に読まれ続けています。
自分の体質の傾向を詳細に知った上で健康管理ができることです。ストア派の実践は健康管理と両輪です。私もこの検査によって健康意識が一段上がりました。共に、幸せと本当の自由を手に入れるために進んでいきましょう。
エピクテトスは、健康を外的なものとして捉え、完全にコントロールできるものではないと考えました。しかし、健康的な生活習慣を維持することは個人の責任であると教えています。2000年前と違い、私たちに少しだけ有利なことは、今は